RLE(実生活経験)について
RLE(実生活経験)について説明します。
目次
- 1 RLEとは
- 2 RLEの目的
- 2-1 トランス環境のチェック
- 2-1-1 周囲の理解等
- 2-1-2 仕事・学業の継続可能性
- 2-1-3 本人のパス度
- 2-1-4 困難場面に対する対処力
- 2-2 性別違和持続のチェック
- 3 RLEのやり方
- 3ー1 室内
- 3ー2 外出
- 3ー3 パートタイム
- 3ー4 フルタイム
- 4 まとめ
RLEとは
RLEとは「Real Life Experience」の略であり、訳すると「実生活経験」となります。
これは「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」に記載されているもので、性同一性障害と診断するための基準、身体的治療(ホルモン治療)へ進むための基準のひとつとして設けられており、診察においてはこれが非常に重要視されています。
RLEとは文字通り本人が女性として実際に過ごしてみることです。それを通してトランスの適合性や問題点などを抽出、検討していきます。
実生活経験(RLE)
本人の望む新しい生活についての必要十分な検討ができていること.すなわち,身体的性別とジェンダー・アイデンティティとの間に不一致が存在しながらも,可能な範囲で今後の新しい生活を試みており,それについて適合感があり持続して安定していること.
注:たとえば,本人の望む生活を試みるなかで,周囲の好奇の目に曝されることへの耐性も必要である.さらに職業に関しては,現在の仕事が継続できる条件を整えているか,一旦職を辞して新しい職に就く場合には,具体的な見通しがついていること.学生の場合には学校側と授業や実習に関しての調整がなされて いるか,特に調整を要さない科目のみの履修で済むように科目選択が可能であるかなども考慮すべき点である.
RLEの目的
RLEの目的について見ていきます。
2ー1 トランス環境のチェック
まずは当事者がトランスするにあたり、置かれた状況や環境などを見ていきます。
2ー1ー1 周囲の理解・カミングアウトの検討
当事者がトランスするには周囲の理解が必要となります。本人がいくら女性になりたいと言っても親や会社、学校などが協力してくれない状況では女性化するのは困難です。
また、そこで自身が性同一性障害だとカミングアウトすることでそれらの問題が解消されるかについても検討が必要となります。同時に「いつ」「誰に」「どのように」カミングアウトするのか、またはカミングアウトしない方が望ましいかなどを検討します。
2ー1ー2 仕事・学業の継続可能性
当事者がトランスし、女性となった場合でも現在の仕事・学校に継続して通うことができるか、辞める必要がないかを見ます。本人が女性化したのがキッカケで会社を首になったり不登校になったりすると当事者にとって悪影響であり、そのような予測されうる不安性はできうる限り取り除かねばなりません。
仮に退職、退学することになったとしても、新たに就職・転校などができるかも考えます。
2ー1ー3 本人のパス度
女性として生活するには見た目が男性のままでは暮らせません。いかに外見が女性に見えるか、つまり本人にそれ相応のパス度があるかを見ます。
2ー1ー4 困難場面に対する対応力の測定
男性から女性になるのだからもちろん簡単なことではありません。様々な問題が出てくることでしょう。まず挙げられるのが「周囲の好奇な目に晒される」ことです。このような場面でも本人に対処する能力があるかを見ます。変な目で見られても精神的に壊れないか、鬱状態などに陥って自殺に至ることがないかをチェックするのです。
2ー2 性別違和持続のチェック
RLEは通常半年から1年をかけて行います。その間様々な問題点が浮上し、困難にも直面すると思いますが、それでも本人に性別違和があり、女性として生活したい、女性になりたい、という気持ちが持続しているかを見ます。
RLEのやり方
RLEの具体的なやり方について見ていきます。
4ー1 室内
やはりまずは室内でしょう。レディースの服を選ぶのもどれを買えばいいのか分からない段階です。似合っているかすら分かりません。メイクだってそうでしょう。まずは脱毛し、服をそろえ、メイクをして室内で女性の格好になってみることから始まります。
ここで新しい女性の自分に感動し目をキラキラさせる人もいれば、あまりのオカマっぷりに落胆する人もいます。それはその人の持つ素質によるところが大きいです。元気が出た人はそのまま進んでください。落胆した人は一度落ち着きましょう。まだトランスは始まったばかりです。元が男性なのでこれは仕方ありません。男性が女性の格好をするんですよ?多少なりとも違和感を持つのが普通です。ドンマイ。
女性ホルモンの効果によって徐々に身体的にも女性化していきます。パス度は上がってきますので急がないでいいです。長い目で見ればほとんどの人がパスできるようになります。
4ー2 外出
次に外に出てみましょう。女性の格好での外出です。最初はドキドキすることでしょう。人目が気になって仕方が無いと思います。おそらくほとんどの人はまだ女声の習得もまだなので声を出すこともできないでしょう。
でもあまり気にする必要はありません。人は自分が思ってるほど他人を見ていないのです。誰もあなたのことを凝視したりはしないでしょう。堂々としていれば大丈夫です。何も法を犯しているわけではないのですから。
外では顔などの細かいところよりも全体的な印象が重要となります。体つきや姿勢、歩き方です。体つきは他の記事で説明してるので参考にしてください。男女のこの違いが「ぱっと見」の印象を決めます。そのぱっと見でその人が男性か女性かを判断しているのです。遠くからでもその人が男性か女性かくらいは分かるのはそのためです。
体つきの違いの克服はどうしても時間が掛かりますのでここは服で上手く誤魔化すのが女性化のテクニックです。男性の体格は▽、女性は△の形をしています。下半身にボリュームを持たせるためふんわりとした「フレアスカート」を着用するのがオススメです。同じ分類にタックスカート、サーキュラースカート、ギャザースカートなどがあります。
4ー3 パートタイム
慣れてきたらできる限り女性として生活してみましょう。仕事や学校ではまだ男性だと思いますのでそれ以外の時間、つまりパートタイムでのRLEとなります。私生活を女性として過ごしてみるといろいろなことが見えてきます。どうすれば女性らしくなれるのか。女性と男性の違いは何か。メイク術やボイストレーニング、姿勢や歩き方、ちょっとした仕草など気がつくことが多いでしょう。それらを研究し、習得することでより女性らしくなってください。
4ー4 フルタイム
最終段階です。24時間365日常に女性で生活するのです。もちろん仕事や学校も。ここまで来たらもはやRLE、実生活経験を超えて「普通に女性として生活」している状態になります。つまりほぼトランス完了です。
パートタイムとフルタイムの間には大きな差があります。簡単に時間の差ではありません。女性化の質の差です。周囲に女性として認知され、ノンカム(ノンカミングアウト、自分が男性だと知らせないこと)でも当たり前に女性として扱われることが必須となります。そのためには女ホルだけでなく改名、SRSも必要になってくるでしょう。当然すぐというわけにはいきません。年単位で時間を見ないといけないでしょう。急いでいる人にはもどかしいですが、それがトランスです。我慢し自身を磨きましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。RLEはガイドライン上の診断基準ですが、別にそれに関係なく女性化するためには誰もが通らなくてはならない道です。トランスの全過程の縮図のようなもので、室内RLEから始まりフルタイムRLEまで、その間に驚くほど見た目も雰囲気も変わり、女性化していることでしょう。
これにかかる期間は人それぞれです。学生なのか社会人なのかなど環境にもよりますし、本人がどれだけ努力するか、どれだけ素質があるかも関係します。周囲の理解や、それを切り開いていく度胸も必要でしょう。
私の場合はどうだったかな。室内からパートタイムに移るまでは半年程度、それからフルタイムでトランスを終えるまでが4年ほどかかったでしょうか。全行程を見ると長い部類になると思います。まぁ家庭や仕事などいろいろありましたからね。あと35歳からのスタートでしたのでやっぱり年齢の壁も大きかったです。でも今は普通に女性として生活しています。これを読んでいる方もそうなれます。信じて女性の道を歩みましょう。努力は実りますよ。必ずです。