診断書関連

ガイドライン診察(はりま)について

 

ガイドライン診察について

ここではガイドラインに沿って診察・診断を行う病院のひとつである、はりまメンタルクリニックを例にして紹介していこうと思います・

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ガイドライン診察とは

通常の病院では日本精神神経学会が定めた「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」(以下ガイドライン)に沿った診察を行います。ここで例にあげるはりまメンタルクリニックは針間克己医師が独立開業したジェンダークリニックです。

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ガイドラインとは

ガイドラインとは日本精神神経学会が定めた「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」になります。リンクを飛んで読んでもらうと分かると思いますが、その内容はとても長くてちょっと難解です。それを簡単に説明します。(ちなみにガイドラインとは医師の診察のいち指針であり、法律ではないことからこれに沿って診察するかしないかは医師の自由です。ガイドラインによらない診察であってもなんら違法性はありません。つまり即日診断も何の問題もなく、その診断書も対外的な効力は同じです)

 

ガイドラインに沿った診察とは

他の記事で紹介している即日診断が1日診てすぐに「ハイ!合格!」というものに対して、ガイドラインでは以下のものを丁寧に診ていきます。

  1. トランス環境のチェック
  2. 周囲の理解・カミングアウトの必要性
  3. 仕事・学業の継続可能性
  4. 本人のパス度
  5. 困難場面に対する対処力の測定
  6. 性別違和の持続のチェック
  7. GID以外の精神疾患の除外
  8. 十分なRLEの達成

 

1 トランス環境のチェック

人間はひとりで生きているわけではありません。人間は社会の中で生きており、社会とは他者との繋がりです。本人がトランスしたいと思ってもそれが社会の一員としてどのような関係にあるか、トランスするに相応しい土壌が整った環境かを診ます。

2 周囲の理解・カミングアウトの必要性

また、トランスするにあたり、男性から女性へ性別を変えるのですから周囲の理解も当然に必要となるでしょう。ある日いきなり女性に転生するわけではありませんから。女性になるにあたり、その胸の内を例えば家族や学校、会社に説明する必要も出てきます。ここではその必要性などを診ます。同時にどのようにすればスムーズにカミングアウトが出来るかなど、その手段も検討していきます。

3 仕事・学業の継続可能性

トランスしても仕事が首になったり、学校に居られず退学になっては生活が継続できません。どんなに本人がトランスしたいと思っていても、周囲の環境がそれを許容していないとおまんま食い上げです。トランスしても実生活で生活していかないといけないことは変わりありません。ここではトランスした場合、それでも仕事や学校は辞めずに済むか(辞めても大丈夫か)、つまり生活をしていけるのかを診ます。

4 本人のパス度

いくらトランスしたくても、どうみても男性であった場合現実問題で女性として生活できません。厳しいようですが、やはりある程度の女性的外見(パス度)を備えていなければトランスは難しいと言えます。ここではそれを診ます。が、これはさほど重要視しなくてもいいです。トランスを始めたばかりの人はほとんどの人はこれを満たしていません。つまりノンパスなんです。でもいいんです。当事者は誰しもノンパスからのスタートです。いきなり完パス(外見上どう見ても女性)の人などほぼいません。医師もそれはわかっているのでノンパスでもこれはクリアできます。

5 困難場面に対する対処法の測定

トランスは順調なことばかりではありません。まさに茨の道です。様々な苦難が襲いかかってくるでしょう。時にはもうダメだ…と諦めてしまいそうになることもあると思います。そうなったときどうするか、です。その困難に対してちゃんと対処できるかを診ます。トランスできないから死ぬ、というのは適切な対処法ではないです。挫けても、泣いても、それでも前に進んで行く、そんな対応が必要となります。

6 性別違和の持続のチェック

トランスするんだ!という決意が一時的なものであってはいけません。あるときは自分が女性だと確信していても、半年後には「あ、やっぱちゃうわ」となっては目も当てられません。よってある程度長期的に見てもこの人のトランス本気度は変わらないな、ということを判断しないといけません。よってガイドラインでの診察は短期では済みません。1日なんてもってのほかです。大抵が半年くらい、長い人では数年かかります。それでもトランスしたいと継続的に思っているか、そこを診ます。

7 GID以外の精神疾患の除外

「思い込み」ってありますよね。それが重度となれば病気によってそうなってる場合があります。例えば解離性同一性障害では「本当の自分」というのが分からなくなります。そのような障害の場合「自分は女性だ」と主張しても一概に「ハイそうですか」とはなかなかいきません。それは単に病気でそう思っているだけではないか、ということです。だとするとそのおおもとの「病気」を治すことが先決です。治せば「あれ、私はやっぱり男やわ」となる可能性が大きいからです。なのでこのような障害が根底にあるようなケースではGIDと診断されることはあまりありません。(まったく無いとは言えませんが)

8 十分なRLEの達成

RLEとは Real Life Experience の略で「実生活経験」といい、生活の中で実際に女性としてやっていくことをいいます。とは言ってもいきなり生活の全てを女性で過ごすのは無理でしょうから、例えば学校以外、職場以外など、限られた時間でのパートタイム経験となるでしょう。休みの日など女性の格好をして外出してみる、などそれに当たります。とは言っても現実はそう簡単なものではありません。未成年や学生なら親の管理下、既婚者なら家族などが居ますのでそう簡単に自由な時間を得られる人ばかりではないでしょう。よって出来る人だけがやればいいと思います。例えばジェンダークリニックに診察に来るときだけでいいので女性の格好をする、とかでも構いません。

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診察の流れ

ここではガイドラインに沿った診察はどのように行われるのか、はりまメンタルクリニックを例にして説明していきたいと思います。

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3-1 カウンセリング(10回)

まず自分史というものを書くように言われます。自分史とは生まれてから現在までどのように生きたか、どのような性別違和を感じていたのかを簡単に記したものです。診察は医師の診察の他にカウンセラーによるカウンセリングがあります。そのカウンセリングで自分史を基に幼少期から現在まで少しずつ進めながら診ていきます。これはおよそ10回ほどあり、頻度は2週間に1度のペースが多いです。

費用は一回につき2,000円程度ではなかったかなと思います(違ったらすみません)。単発では安いですが、トータルでいくと結構高くなりますね。

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3-2 染色体検査

これはガイドラインに定められているので、身体的に「男性」であることの確認をします。身体的に「男性」とは?と思われる方もいると思いますが、例えば性分化疾患(性染色体異常など)は身体に男性器と女性器の両方を備えており、そのような場合は一概に身体の性別がどちらかとは判断できないのです。ガイドラインによる診察は名目上「身体的男性」を対象としているため、ちゃんと男性器を備え、染色体も男性のxy染色体(女性はxx染色体)ですよという確認をここで行います。(性分化疾患でも直ちに診察から弾かれるわけではなく、性自認がしっかりしていれば治療の対象となります)。

費用は結構高くて1万5千円くらいです。

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3-3 泌尿器科検査

上で述べたことに繋がりますが、染色体の検査の他に身体の具体的な性器の形状を外形的に判断します。これは身体的男性の場合、紹介された泌尿器科に行って実際に「おつんつん」と「たまたま」をグニグニと触られて診察されます。結構、いや、かなり嫌な診察です。

費用は文書代等合わせて8千円くらいでしょうか。

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3-4 セカンド診察(3回)

性同一性障害の診断は慎重に慎重を重ねないといけないため、2名以上の医師の診断が必要となります。ひとりが診断(意見書:ファーストオピニオン)してもそれが間違っているケースも無きにしも非ずだからです。なのでもうひとりの医師も診察して診断(意見書:セカンドオピニオン)するのです。ここで「えー、また同じことやるのー?」と落胆される方も多いと思いますが、はりまメンタルクリニックでは同病院内にもう一人医師が居て、その人の診察を3回ほど受ければクリアになります。わざわざ別の病院に行く必要がないのは助かりますね。

費用は通常の診察と同じくらいだったと思います。2千円くらいかな?

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3-5 性別判定会議

ふぅ、やっとここまで来たか、とお思いでしょうが、問屋はそう簡単には卸してくれません。まだあります。2名の医師の診断(意見書:オピニオン)を得た当事者は精神医学学会のエラい人を集めた会議にかけられ「この人本当に大丈夫?間違いない?どう思う?」といったように複数人で審議・判定されます。これを性別判定会議といいます。これはエラい人がやるので自分は出席等の必要はありません。

費用は1万円程度です。うん、ちゃんと取られます。

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3-6 診断書取得

順番はちょっと前後することもありますが、この辺りまで来ると診断書が発行されます。ただ、診断書は対外的に「私は性同一性障害ですよ」と示すために発行されるものであるため、これが必要ない人には発行されません。発行されるのは会社や学校に配慮を求める際に見せるケースでしょうか。あ、でも「改名」には診断書が必要なのでどっちみち取らないといけませんね。ちゃんと改名用の診断書があります。

費用は文書代として約5千円です。それに診察代2千円くらいかかるかな。

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3-7 ホルモン治療開始

性別判定会議を通過すると「あなた合格ね」という書類が手元に届きます。結構嬉しいです。これを経て初めてホルモン治療ができます。長かったですねぇ。ホルモン治療はほとんど注射(デポー)によって行われます。種類は相談に乗ってくれますが、だいたいが卵胞ホルモン剤であるプロギノンデポーを2アンプルってところでしょうか。簡単な診察のあと別室に呼ばれてそこで看護師さんにお尻もしくは腕に注射されます。少しだけチクッとします。希望するとエストロモンという卵胞ホルモンの錠剤を処方してもらうことも可能です。薬局は病院近くにあります。

費用は診察と2アンプルの注射で2千円くらいです。

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3-8 SRS準備

ホルモン治療のあとは性別適合手術(SRS)となります。国内の大学病院などでやる場合にはまた性別判定会議にかけられ、当該病院でSRSすることになると思います。この場合の判定会議ではRLEがパートタイムでもほぼ完全に達成されていることなど、ホルモン治療前のものより厳格に診られます。

タイでSRSする場合は英文の推薦状を書いてくれます。これ以降はSRS分野となるのでこの記事では割愛します。

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SRSする病院

ガイドラインでのSRS病院は国内であり、病院も限られています。

 

ガイドラインSRS病院

  • 札幌医科大学附属病院
  • 山梨大学附属部医学病院
  • ナグモクリニック
  • 岡山大学病院

 

上記病院になると思います。

このうちナグモクリニックは入院設備が整っておらず、オペ翌日には退院して近隣ホテル泊まりになります。個人的な意見で恐縮ですが、私だったら避けます。それ以外の大学病院は入院できるため全体においてサポートを受けることができます。

注意しなければならないのは、岡山大学病院は他でどんなに診察が進んでいてもリセットされます。また初診からのスタートということです。なので岡山を考えている人は最初から岡山で診察を受けることが望ましいでしょう。

また、札幌医科大学付属病院は倍率が激しくて抽選制を採用していると聞きます(要確認)。

私の周りでは山梨大学病院でSRSしている人が体感では多いですね。

どの病院も予約が結構埋まってる状態です。SRSすると決めても実際にオペするまでそれなりに待つ必要があるかもしれません。

国内は症例数の少なさから不安に思う人もいるかもしれませんが、各医師ともガモン先生を国内に呼び勉強会を開いたりと積極的に技術を身につけています。私はガモンでのSRSなので確定的なことは言えませんが、国内で行う人も結構いるということは言えます。

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ガイドラインのメリットとデメリット

ガイドラインのメリットとデメリットを見ていきます。

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5-1 メリット

なんと言っても「慎重に行ってくれる」ことでしょう。例えばトランスに自信がない方や、この先どう生きていけばいいか分からない方、カミングアウトの必要があったりトランス後の人生に不安があったりする方は、それらを含め親身になって相談を受けることができます。これはとても大きな事です。私もはりまメンタルクリニックで診察を受けましたが、会社にどのように受け入れてもらうか、カミングアウトはどのようにすればいいかなど一緒に考えてくれました。不安要素がある人にとっては大変心強いものだと思います。

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5-2 デメリット

時間がかかります。ガイドラインは上記で述べたようにいろいろな要素を見ながら慎重に進めていくため短くて半年、長ければ一年以上の時間が必要です。はい、長いです。すぐに診断書を欲しい人などには向いてないでしょう。また、相談しなくてもトランス後どのように生きていくかの展望がある人も向いてないと言えます。そのような人は即日で診断書を発行してくれる病院がいいでしょう。時間をかける意味がありません。

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まとめ

いかがだったでしょうか。当サイトは即日診断を推してますが、そうでない人も少なからずいると思い、経験を基に記事にしてみました。トランスの過程は千差万別です。慎重にいく人もいれば最短で走る人もいるでしょう。どちらが良い悪いは状況や環境によりますので一概には言えません。

自分に合った診察スタイルを選んでください。それが生きる道となり糧となるでしょう。

トランスは楽な生き方ではありません。茨の道です。最初は苦難に打たれ挫けることもあると思いますが、信じて努力し、継続していれば必ず花は開きます。ツラい時期かとは思いますが、信じて進んで行きましょう。この記事を読んでいる方の、少しの助けにでもなれればと思っております。

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