戸籍変更【その他手続編】
無事性別の取扱いを男性から女性に変更した皆様、おめでとうございます。しかし手続はそれだけでは終わりません。以下これから必要になるであろう手続の一部を紹介しますので参考にしてみてください。
目次
- 戸籍
- 住民票
- 保険証
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- パスポート
- 年金手帳
- 雇用保険被保険者証
- 銀行
- 保険
- 自動車任意保険
各種手続について
各種手続についてみていきます。
戸籍
・手続:不要
・所要時間:約一ヶ月
戸籍は裁判所から市役所に連絡が行って、連絡を受けた市役所が戸籍を変更してくれるので自分で手続する必要はありません。変更までには一ヶ月程度かかります。結構長いですね。裁判所によっては「戸籍が変更されたよ」という連絡を書面で送ってくれるところもありますが、それを待ってたらかなり時間がかかります。「裁判所→市役所→裁判所→自分」という流れを踏むのでどうしても長くなっちゃうんですよね。急ぎの場合は裁判所からの通知を待たずに市役所に行って戸籍謄本を請求してみてください。タイミングによっては「あ、ちょうど今変更手続してるのでちょっとお待ちください」と言われてその日に変更されます。こっちの方がいいですよね。あと、コンビニで戸籍の請求するときにエラーが出たらそれは市役所の戸籍係が変更の作業中という合図です。その場合もとっとと市役所に行って変更してもらいましょう。
ポイント
ところで性別を変更すると戸籍の記載は例えば「長男」が「長女」に変わるわけですが(正確な意味では戸籍には性別の記載がない)、同時に性別を変更した履歴も記載されます。この変更履歴はどうやっても消えません。ただ「〇年〇月〇日:性別を男から女に変更した」などとダイレクトなものではなく、「平成15年法第111号3条」と記載されます。平成15年法第111号とはみんな大好き特例法のことで、3条は裁判所が性別変更の審判をすることができる旨を定めた条項を指します。よってこれに詳しくない人が戸籍謄本をパッと見ただけでは性別を変更したということは分からないでしょう。
しかしですね、問題はそこではありません。性別の変更によって続柄が「長女」になったかと思いますが、実は前の記録がちゃんと載っているのです。そうです、「従前の記録、父母との続柄:長男」とあるのです!マイガッ!ガッデム!流石にこれは痛いです。かなりのダメージです。せっかく「長女」になったのに「長男」の記録が消えていない…そんなバカなことってある?って思いますよね。私もそう思います。
頭を抱えてる皆さん、ご安心ください。実はこれには裏技があります。この「従前の記録」を消す方法があるのです。それは新しい戸籍を作ることです。今の戸籍を抜けて別の新しい戸籍を作るのです。簡単に言いましょう。転籍するのです。転籍はと本籍を変えることです。本籍を変えると新しい戸籍になります。戸籍が移り変わる際に引き継がれる情報というのが戸籍法で定められているのですが、この「引き継がれる情報」に「従前の記録:長男」は無いのです。つまり引き継がれない=消えるのです。ばんざーい。
本籍地は実際に住んでいるという事実は必要ありません。自己申告でいいんです。一番多くの日本人が本籍地にしてる所ってどこかご存じですか?それは東京都千代田区千代田1番です。これ「皇居」なんです。次に富士山だったかな。まぁどこでもいいから有名な場所にしようって人が多いんですね。このように本籍は住んでいる必要がなくてもどこでもいいので自分で決めることができます。自分で決めて転籍しましょう。転籍とは本籍を移すこと、それによって戸籍を移すことです。もっと正確に言うと今の本籍地の戸籍をバツにして、新しい本籍地で新しい戸籍を作ることです。
ただしこれには注意点があります。それは同じ市区町村内ではダメってことです。同じ市区町村内で本籍を動かしても今ある戸籍の記載が変更されるだけで新しい戸籍が作成されるわけではありません。よって「長男」の記載は消えません。本籍は他の市区町村にして転籍手続をしてください。そうすれば新しい戸籍が作成されて「長男」の記載は消えます。※念のため再度申し上げますが、「長男」は消えても特例法の「平成15年法第111号3条」の記載は消えません。
本籍が今の住所がいいという人は一度転籍した後、今の住所にまた転籍し直すといいでしょう。
ちなみになんですけど、転籍の他にも方法があって、それは「婚姻」です。夫の戸籍に入るのです。この場合も「長男」の記載は同じように消えます。私はこれで消しました。
住民票
・手続:不要
・所要時間:約一ヶ月
住民票も自動で切り替わります。このタイミングは戸籍よりも少し早いです。
保険証
・手続:必要
・内容:再交付
・場所:
あああ無職→市役所等国保年金課
ああああ必要書類:なし
ああああ所要時間:即時
あああ会社員等→勤め先
ああああ必要書類:会社に聞いて
ああああ所要時間:会社による
私は無職だったので市役所窓口で手続しました。手続は今持ってる保険証を返却して新しいのをもらうだけです。即時発行されました。早すぎてちょっと驚きました。会社にお勤めの方は総務課なり会社の部署を通じて変更するものと思われます。性別というデリケートな情報なので部署等を通すのもちょっと気が引けますよね。ドンマイがんばって。ただ、性別を変更する状態でもう働いているということは、既に女性という立場で会社に認められているということだと思うので、何を今更って感じの人も多いかもしれませんね。
ポイント
保険証の変更に伴って病院の診察券なども連動して変更していくことと思います。新しくなった保険証を出す際に「記載事項に変更がありますのでよろしくお願いします」と一声掛けると対応してくれます。私はそれに加え保険証に矢印を書いた付箋を貼って出しました。診察券の性別が女になると共に病院でのカルテのデータも女性に変わります。診察室で医師がパソコン画面を見ていると思うのですが、多くはこれ性別によって色分けされています。以前は青色だったはずです。これが赤に変わります。
でも実は喜んでばかりもいられません。注意しないといけないのは各種数値が女性ベースになったといっても、身体は男性のままだということです。男性と女性とではいろんな数値の基準値が異なるのです。これによって男性だったときは正常だったのに性別を変更したら異常値になってしまったとうケースがあります。実際私がそうなりました(腎臓機能の数値)。このことについてX(旧Twitter)で発言したところ、「内蔵ノンパス」とか「女性の領域に踏み込むな」とか多数の批判を受けました。ちょっと傷つきましたね…。そこまで言わなくてもいいじゃん…。(ちなみに当該病院では男性時代から通院していたので性別が変わったことは医師に告げています)
これにはいろいろな意見があって、医療面を重視して性別のことは正直に申告するべきだという意見もあれば、元の性別を明かすぐらいなら死んだ方がマシだという考えの人もいます。普通に病院にかかる際はいいとして、急に倒れるなどして緊急搬送されるケースはどうすればいいんでしょうね。意識がない中自分の性別を伝えることは出来ないですよね。その際は身分証の性別、まぁ保険証に記載された性別として処置されることになるでしょうね。
運転免許証
・手続:必要
・内容:データ書き換え
・場所:警察署
・必要書類:本籍が記載された住民票
・所要時間:即時
運転免許証には性別の記載はないですが、データでちゃんと管理されてます。それの書き換えが必要なんですね。必要なのは戸籍謄本ではなく住民票です。注意してください。あと住民票は必ず本籍記載のものを持っていってください。その記載がないとだめです。所要時間は30分程度で終わります。免許センターではなく警察署窓口でできるのが便利ですよね。
マイナンバーカード
・手続:必要
・内容:再交付
・場所:市役所
・必要書類:なし
・所要時間:約一ヶ月
驚いたことに必要な書類や準備は不要です。市役所のマイナンバー窓口に行って手続きするのですが、なんと写真もその場で撮ります。まぁこれは自治体によるのでしょうが。私のところではグリーン色の布があってそれを背景にタブレットで写真を撮られました。なんて簡易…。もちろん事前にちゃんと写真を準備している人はそれが使えると思います。再交付の準備ができたら市役所から通知が郵送で届きますので、その通知を持って役所に行ってください。窓口ではマイナンバーのパスワードが必要になりますので忘れずに。古いカードと交換になります。
パスポート
・手続:必要
・内容:再交付
・場所:市役所・パスポートセンター
・必要書類:申請書
ああああああ現在有効なパスポート
ああああああ戸籍謄本
ああああああ顔写真
・所要時間:約一週間
パスポートの性別記載の「M」が「F」に変わります。パスポートの変更は今持っているものを破棄して新しいものを作る方法と、今持っているものの記載内容を変更する方法があります。どちらも再交付なので結果は同じなのですが手数料が大きく違います。記載内容変更の方が安いです。なのでこれで手続するといいと思います。あ、有効期限が切れそうな人は新しく作ってくださいね。
年金手帳
・手続:必要(半自動)
・内容:再交付
・場所:書類での手続き
・所要時間:約二ヶ月
・必要書類:戸籍謄本、年金手帳
戸籍の変更後しばらくすると年金事務所から「年金記録の性別変更手続きに関するご案内」という書面が送られてきます。同封されている書面に必要事項を記載し、年金手帳と共に返信用封筒に入れて返送しましょう。手続には二ヶ月くらいかかります。長いです。
年金手帳は通常は再発行はされないのですが、性別の変更のケースはされるようです。←違いました。年金手帳は令和4年4月1日に廃止され、それ以降は「基礎年金番号通知書」というものに変わりました。年金手帳が再発行されるものとちょっと期待していたのですが、届いたのは基礎年金番号通知書でガッカリしましたね。
基礎年金番号通知書は以下のようなもので、大きさはカードサイズ、質はとんでもなく安っぽいただの厚紙です。これが大事な基礎年金書類とは…。ちょっと納得がいきません。ちなみにこれには性別の記載はありません。
雇用保険被保険者証(注:健康保険証ではない)
・手続:必要?
・内容:再交付?
・場所:
あああ無職→ハローワーク
あああ会社員、パート、バイト→勤め先
あああこれまで働いたことがない人→手続不要
↓例:こういうやつです
ごめんなさいこれは正確には分かりません。私が働いていた公務員は雇用保険がなかったからです。なので私にはまだ「雇用保険被保険者証」というものがありません。雇用保険被保険者証とは雇用保険に入っている人の情報を記載したものです。通常働いている人であれば雇用保険に強制加入しており、この書類があるはずです。そしてこれは勤め先の会社に保管されてあります。で、退職するときに会社から貰います。大抵の人はそのとき初めて手にすることになります。
この「雇用保険被保険者証」には性別の記載はないのですが、運転免許証と同じように管轄省庁でデータとしてちゃんと管理されているようで、この場合ハローワークが管轄になります。無職の人はハローワークに行ってください。会社員など働いている人は一応担当部署に相談した方がいいかもしれません。
自分が雇用保険に入っているかどうかは給与明細を見ることで分かります。給与明細には「雇用保険」という欄があり、そこに給与から差し引かれた金額が載っています。そこに金額の記載があれば雇用保険に加入しているということになります。つまり雇用保険被保険者証があります。金額の記載がない人は雇用保険に入っていないと判断することができます。
「前の会社の雇用保険被保険者証がない!」「なくした!」「何ソレおいしいの?」って人はハローワークに相談してください。再発行してくれる場合があります。
性別変更のため退職し、無職状態で性別変更、これから女性として就職しようとしている人は注意してください。前述しましたがこの書類には性別がデータとして紐付けされてます。このため、この性別の変更をしておかないと再就職先の会社で不突合が発生し、ハローワークから会社に連絡が入るなどして元の性別(つまり元男性だということ)が知られしまいます。再就職前に必ず変更してください。性別の変更はハローワークで行うことができます。
銀行(例:三井住友銀行)
・手続:必要
・内容:データ書き換え
・場所:支店窓口
・必要書類:保険証orマイナンバーカードorパスポート
・所要時間:即時
これは銀行によって違うと思うのですが、三井住友銀行を例にするとこんな感じです。保険証かマイナンバーカードかパスポートは性別が女性に変更されている必要があります。よって一番早いのは保険証かと思います。データの書き換えだけでカード自体は変わらないので所要時間は即時でした。三井住友銀行の場合はアプリでスマホなどの端末から個人情報を確認できます。変更後確認すると性別が女性になっているので「おお」と思いました。窓口で変更手続きしてすぐに確認したんですがもう反映されてました。デジタル化が進んでますね。
細かい手続きについてはみなさまの各銀行に問い合わせてください。なんとなくですけど都市銀より地方銀行の方が融通が利かずにめんどくさいような気がします。
保険(例:アフラック)
・手続:必要
・内容:契約内容変更
・場所:書類での手続
・必要書類:戸籍謄本
・所要時間:約二ヶ月
私が加入しているアフラックだとこんな感じです。特に難しいことはありませんでした。窓口に電話して届いた書類に記入して戸籍謄本を同封して返送しておわりです。ただこれには注意点というかちょっと驚いた点があって、保険料は性別によって違うのですが、この性別を変更するとその差額が請求されます。当たり前のようにも思えますが、驚いたのはこれが性別変更時点ではなく保険加入時点まで遡って全部の差額を合計して一気に請求されます。私は6万円請求されました。請求書を見たときはシッコ漏らしましたね。もちろん逆のケースもあって還付されることもあります。でも男性から女性への変更だとたいだい請求されるケースになると思います。あ、加入期間が短い若い人はあまり差額も出ないでしょうから心配しなくていいと思います。
性別の変更によって保険料が変わるので翌月から引き落とされる金額も変わります。
ちなみに保険料の差額と簡単に言いましたが、正確に言うと「責任準備金」の差額です。責任準備金とは保険会社が将来の保険金給付や解約返戻金支払い等に充てるために保険料や運用収益を財源として積み立てておく必要がある準備金のこと、らしいです。つまり保険会社が契約者にちゃんとお金を払えるように蓄えておきなさいねと法律で決められているお金のことだと思います。被保険者を守る法律によるものですね。
自動車任意保険(例:全労済)
・手続:必要
・内容:契約記載内容変更
・場所:書類での手続
・必要書類:戸籍謄本
・所要時間:二ヶ月
上と同じです。性別によって保険料の違いはありませんので差額を請求されるということはありません。私の保険証書には性別の記載はないのですが、記載のある保険会社もあるのでその場合は早めに手続きをするのがいいと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか。いろいろあるのでやってみると結構忙しいです。しかしこれを乗り越えれば戸籍と共に各種書面やカードの性別も女性になります。個人的には保険証が一番嬉しかったですね。手続的なトランスはこれで終了ですが、女性としての人生はこれからです。今まで努力していた分を存分に発揮して胸を張って生きてください。きっと輝かしい未来が待っていることでしょう。このサイトもみなさまのトランス過程において少しでもお役に立てたなら幸いです。トランスしても性別は変えられないという厳しい声もありますが、私はそうは思いません。どんなに身長が高くても、どんなにガタイが大きくても、どんなに声が高くなくても、例え染色体がxyでも、これまでどんなに高く険しい山でもそれを乗り越え、厳しい茨の道を進み暗闇の中をもがき血のにじむような思いをして、そうやってようやく勝ち取った私たちの性別は、「女性」です。私はそう思います。
女性として、この先も生きていきましょう。みなさまの人生に幸あらんことを。
これまで長らくありがとうございました。
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